第4話 脱走

縮小化された女子高生をブーツで踏み潰して処理する和奏
「出席とるよーって、いないんだけど?」
朝。
このクラスの生徒であり、兼担任教師でもある和奏が教壇に登ると、歯抜けになった席を眺めて小首を傾げる。
「遅刻は体罰だって言ってあるのに……えと、五人も? ふぅん」
和奏の様子をびくびくしながら見守る生徒たちをよそに、彼女はなるほど、一人納得していた。
「逃げたのね?」
生徒たちは答えられない。
しかし和奏にしてみれば、ほぼ確信があった。
こういう事態はままあることであったからだ。
この新しいクラスになってからは、初めてのことではあったが。
「そ。なら見つけ出して処理しないとね。あ~あ、今日は授業にならないなぁ」
ぼやきつつ、和奏は教室内を見回して、にやりと笑う。
「そういうことだから、今日は課外授業ね? みんなでクラスメイトを捜索。見つけたら私にただちに報告すること。一人……ううん、もうまともな人間じゃなくなってるわね。一匹でも見つけて報告できたら、あなたたちにはお咎め無し。連帯責任は考えないであげる。でもできなかったら……わかるわよね?」
嗜虐的な笑みを浮かべる和奏に、生徒たちは頷くしかない。
それを見て、和奏は満足そうに頷くのだった。
「じゃ、始めよっか」
◆
「はい、見つけたっと」
和奏の足元で震えているのは、二人の女子生徒だった。
どちらも十センチ程度に縮小しており、立ちふさがる和奏の前で愕然としてしまっている。
「た、助け……」
一人の少女が懇願するも、和奏は無言でブーツを持ち上げると、無造作に振り下ろした。
グジュッ!
「ああああああ――っ!?」
軽く踏んだだけなのに、女子生徒は一切の抵抗も許されずに身体を押し潰される。
一瞬で絶命しなかったのは、下半身のみを踏み潰されたからだった。
「ああっ! 痛いっ! いだいよおおおおおおっ!」
「まあ、潰れちゃってるしね?」
くすくすと笑みをこぼしながら、潰れた身体を和奏は踏みにじる。
グジグジグジ……。
「あ……あ……」
もはや悲鳴を上げる体力も残されていないのだろう。
女子生徒の声が次第にか細くなり、命の灯火が急速にしぼんでいくのが明白だった。
「逃げたら殺すって言っておいたのに……馬鹿よね?」
その言葉は、踏み潰されて瀕死になっているクラスメイトを眼前にして、腰が抜けて動けなくなってしまったもう一人の女子生徒に向けられたものだ。
「クラスメイトのよしみでせっかく可愛がってあげてたのに。まあ、ぐじゃぐじゃになって反省するといいわ」
それだけ告げて、今度は右足のブーツが無慈悲に移動してくる。
「い、や……」
「さよなら、と」
びちゅ!
今度はその靴底が、少女の上半身を無惨に踏み潰す。
先の少女とは違い、頭を砕かれたことで、この少女の場合は即死だった。
そして和奏は宣言通り、両足の踵を少し浮かすと、そのままぐじり、ぐじりと残酷に踏みにじる。

それをしばらく続けたあと、地面の砂や土といった汚れに、人体の血の肉が加わって、元が何であったか分からないものへと成り果てた。
そこまでしてから、和奏はようやく足をどける。
「ふふ、汚いなぁ」
この学園では、生徒は定められた敷地以外に出ると、強制的に縮小化される呪いが施されている。
学園からの脱走が不可能な所以の一つでもあった。
「さて、逃げたのはあと三匹か。フフ、どんな風に踏み潰してあげようかしら」
そしてもう一つは、和奏自身が決して脱走を許さず、必ず追い詰めて踏み潰してしまうからでもあった。
それは一度も例外も無い。
久しぶりの狩りに、和奏は心底愉し気に笑ったのだった。


