第3話 和奏の粛清
ブーツでイかすと同時に股間を踏み潰された挙句、頭蓋をも蹴り砕かれて処刑される憐れな教師
グリ、グリ、グリ……。
放課後になり、誰もいなくなった教室で、荒い息遣いだけが響いていた。
「くぅ……」
男がたまらなくなったように喘ぎ声を出し、右手を自身の股間へと添えようとする。
「ああ、手を使っちゃダメでしょ?」
それを、それまで男の股間を踏みつけていたブーツに包まれた足が、すげなく蹴り飛ばした。
といっても軽く、払い除ける程度に、であるが。
「足でしてくれって言ったの、先生でしょう? 今さら自分でしようだなんて、不愉快だなあ」
不機嫌を装いつつ、和奏は再び自分の足を、男に股間へと振り下ろした。
今回は多少、強めに。
「うぐっ」
「あはっ。気持ちよさそう。でも……」
和奏は更に力を込めて、股間を踏みにじる。
彼女の履くレースアップのショートブーツは、細く高い踵を揺らしながら、男のものを押し潰し、歪ませ、苦痛を与えると同時に、得も言われぬ快感を送り込んでもいた。
彼女の履くハイヒールブーツは明らかに市販のものとはわけが違う高級感のあるもので、その靴底には複雑なパターンの滑り止めが刻まれており、和奏が足を左右ににじるたびに、その皮が赤く擦り剝け、やがて血を滲ませていく。
痛々しい様子ではあるが、男の顔を眺めてみれば、まさに至福の瞬間を味わっている、という呈だ。
ただ、少し刺激が物足りなくなってきているらしい。
さきほどつい手を伸ばしていたのが、その証左だ。
もちろん、和奏にはそんなことは手に取るように分かっていた。
分かっていて、焦らしているだけである。
中途半端な刺激を与えて、悶える様を愉しく眺めるために。
だがそれも、いい加減飽きてきたところである。
だから和奏は、少しずつ、ブーツに力を込めていった。
「……ねえ。あなたのもの、靴底でひしゃげちゃっているけど大丈夫?」
「だ、大丈夫です……。もっと、強く……!」
「私、そろそろヒールで踏んでみたいんだけどなぁ……。でも私のヒールで踏まれて耐えられた男って、いないし?」
「いいから……踏んで欲しい……っ、です! ぎゅうっと! ぎゅうっとぉ!」
「え、いいの?」
懇願する男を見下ろしつつ、和奏はその口元に冷笑を浮かべた。
そして嘲るように告げる。
「フフ、とんだ変態さんだね。じゃあお望みどおりに、っと」
じゃあ遠慮なく、とばかりに和奏は右足に力を込めた。
一息に、一切の加減無く、思い切り踏みつけたのである。
グシャバギベキベキ――!
「!? ひぎゃあああああ――――!?」
「あははっ。ぺしゃんこになっちゃったね?」
和奏が笑う。
見ればそのブーツの大半は、男の下腹部の中に埋もれてしまっていた。
男のものごと、和奏がその腹部を踏み潰した結果である。
容赦なく踏みつけられたその靴底は、ヒール部分は勿論のこと、ソールの部分に至るまで、男の象徴だけでなく、その下詰まっていた腸や背骨まで圧壊させ、押し潰してしまっていた。
その勢いやすさまじく、ヒールなどは人体を突き抜けて、床に突き刺さってしまっているほどである。
ドビュッ――!
「あは。出た出た。こんな状態でも、いっぱい出るんだね。気持ち良かった? 人生最後の射精は」
「あぎゃ、ひぎゃ、ななな。なんで……!?」
激痛に悶えて混乱しながら暴れる男であったが、自分を踏み潰して貫通している和奏の足は、まるでびくともしない。
「なんでって。先生、私の生徒に手を出したでしょ? ていうか、今、ブーツの下敷きになってるやつのことだけど」
「あ……そ、それは……教育的指導で……!?」
「はぁ? 先生にそんな権限、与えた? 与えてないよね? 越権行為だよね? そういうのは許さないって、最初に言ったよね?」
「あ……あ、ああ、あ……!」
「そういうわけだから。最後に言い残すことは?」
「いや――だ、た、助け、助けてくれえぇええええ、だれ――ごべ」
男が全てを言い終わる前に。
和奏の左足のブーツの爪先が、男の脳天を貫き、内容物を弾けさせてしまっていた。
「あ。うるさかったからつい殺しちゃった」
ぼた、ぼた、と飛び散った内容物が床に撒き散らされ、猛烈な血臭が周囲を覆う。
が、和奏は顔色一つ変えずに肩をすくめただけだった。
「ま、いいか。――さて、そういうわけですから、他の先生方も、十分に自分を戒めて教鞭を振るって下さいね?」
男の残骸から軽い足取りで離れた和奏は、教室の隅に設置されたカメラに向かって微笑む。
このカメラを通してモニター越しにこの光景を見せつけられた、この学園の教職員たちは、ある者は冷笑し、ある者は恐怖し、ある者は崇拝するかのように目を輝かせて。
和奏の粛清を脳裏に焼き付けたのだった。