第4話 卒業式と生贄の少年たち
振袖の晴れ姿と草履の足元で潰れる少年たちのモノ
「ふふふ。一度こういうの、してみたかったの」
嬉しそうにそう言い、わたしの目の前でくるくると回ってみせるのは、すでに元気いっぱいになった比良坂和奏だ。
昨夜、あれだけ可愛がってあげて、わたしも少しやり過ぎたかと反省したというのに、朝になってみればこの通り。
さすがはわたしの一番弟子、なのでしょうね。
「よく似合っていますよ」
晴れ着姿をこれでもかとアピールする和奏であるが、その姿は艶やかな振袖姿だ。
この国の民族衣装である。
「エラさまも!」
「ありがとうございます」
この振袖なるもの、当然のようにわたしの分も用意されていた。
となると、着ないわけにもいかないだろう。
この国の伝統的な衣装であるものの、現代では通常、身に着けている者はほぼいない。
そもそも晴れ着というだけあって、ハレの日に着る類のものである。
では今日は何の日かといえば、卒業式。
比良坂学園の卒業式当日である。
主役は卒業生の二人。
上月明莉と姉川怜奈だ。
この二人も和奏のお仕着せでめいっぱい着飾っている。
昨夜いろいろあったから、明莉はともかく常人である怜奈は朦朧としているけれど、どうにか踏ん張っているみたい。
この三年間でそれはもうひどい仕打ちをしてきた和奏も、こうして一度認めてしまえば惜しみなく祝福するあたりは、まあ彼女らしい。
それはいいのだけれど、問題はどうしてそれにわたしまで参加しているのかという点だ。
断っても良かったものの、しかし昨夜、ちょっと興に乗りすぎて、和奏を幾度か泣かしてしまった。
そのお詫びに何でもしますと提案したら、こういうことになった、という次第。
でも確かに素敵な衣装である。
こういうのは彼氏君にも見せたことがないし、見たらどんな反応をしてくれるか興味も湧いてくる。
「和奏。もしよろしければ、これはいただいても?」
「もちろん! 気に入って下さったのなら、もっとあげるから!」
「嬉しいです。ですけれど、ちょっと一人では着れませんね……」
素敵な衣装ではあるが、一人で着るのは容易じゃない。
「エラさま、大丈夫。必要な時はできる者を向かわせます。和奏や怜奈なんかもできますし、二年生の生徒で着付けの一つもできないような生徒は、とっくに処分済みだから」
にっこり笑顔で和奏は言う。
「怜奈がいいかな。和奏はできるけどちょっとマイペースだし、てきぱきしているのは怜奈の方。それにエラさまに命を助けてもらったのだから、喜んで役に立とうとするはずだよ」
どうやらこの学園の生徒はずいぶん多才らしい。
「ではいつかお願いしますね」
さて。
ともあれ卒業式とやらを楽しむとしましょうか。
※
この学園の卒業式は、わたしの知る世間一般の卒業式とはやはりちょっと違うものだった。
厳密には儀式といった方が正しい。
つまり和奏が運営している組織、あるいは秘密結社の一員となるための、通過儀礼のようなもの。
特に今回は新たな魔法使いとして明莉が正式に認められた。
しかもわたし自身が認めたことで、明莉の組織内での地位はかなり高いものとして約束されているらしい。
卒業式には現在、組織で主要な地位にいるOBやOGも参加しており、それらの祝福を受けた後、最後の儀式に臨むべく、和奏に案内されて校内の地下へと進んでいたのだった。
着いた場所は、言ってしまえば地下牢のようなところ。
そして牢には複数の人間が捕らわれている。
さらに付け加えると、濃厚な香の匂い。
「……和奏さま、これは?」
尋ねたのは明莉。
「生贄よ?」
事も無げに和奏は答える。
「あなたたちへの、ね」
「私の……?」
和奏の言葉を耳にしつつ、わたしはざっと牢の中を見渡してみた。
男ばかりが十人以上はいるかな。
しかもみんな、若い者ばかり。
少年いった年頃だ。
そしてすべてがすべて、全裸である。
「卒業できた明莉と怜奈への、私からのプレゼント。今年はけっこう豊作でね? 全部犯し尽くして食べてしまっていいから。明莉にしてみれば魔力の底上げになるでしょ?」
なるほど。
これはいわゆるサバトの類というわけね。
となると、最後はオルギア……乱交になるわけで、和奏がわたしをも誘った理由がよく分かるというものだ。
昨夜あれだけしてあげたのに、まだ欲求不満らしい。
そういうわけで、それは始まったのである。
※
「エラさま? ちょっとだけ私、最初は我慢するね。今日は明莉たちの晴れ舞台だし」
意外に理性もしっかり残っているようで、最初に和奏はそんな風に耳打ちしてきた。
わたしとしても、否やはない。
「さすがエラさま。この程度の媚薬じゃ全然、だね」
「媚薬……ですか?」
この地下に充満している香は、なるほど和奏にしてみれば媚薬程度なのだろう。
しかし実際には麻薬の類である。
「怜奈さん、といいましたか。彼女は大丈夫なのですか?」
わたしにしても和奏にしても、明莉にしても魔法使いだから、毒性にもかなりの耐性がある。
でも怜奈は常人のはず。
「ふふ。あの子、ああ見えてかなりの淫乱なんですよ。そして男好き。学園の半分くらいの男とヤったことがあるんじゃないかな?」
それはなかなかどうしてお盛んなことね。
「私も面白がって、いろんな媚薬をあの子にあげて、試してもらったことがあるの。だから彼女、この程度なら問題ないんですよ。むしろ、あの子のため。自分が補欠で卒業できたと思って、緊張とか委縮としかしていそうだし、そうだと愉しめないでしょ?」
「あらあら。和奏は意外に面倒見が良いのですね」
「もう仲間になったんだし、大切にしないとね?」
などと和奏と他愛の無い会話を交わしつつ、しばらくは見守ることにする。
明莉にしろ怜奈にしろ、すでに物色を始めていた。
「この子かわいいっ」
少年を目の前にして、最初に手を出したのは怜奈だ。
なるほど。
彼女は朝から眠そうにしていたと思っていたけど、実際にはこの香、式場にも微量に流していたようだ。
だからすでにそういう気分になっていたはずで、そこにこうやって餌がぶら下がれば……我慢も限界といったところだろう。
「あは。大きくしちゃって」
充満している媚薬効果のある香は、何も怜奈にだけ効果があるわけじゃない。
当然ながら、この地下にいた人間はほぼ例外なく、性欲が異常に促進されているはずだ。
事実、男などは分かり易い。
個体差はあるものの、股間にぶら下がっているものが、それなりに自己主張しているしね。
「お姉さんが可愛がってあげるわ……はむ」
「あ、ああああ」
特に自己主張の激しいソレを見つけた怜奈は、その場に膝をつくと、何のためらいもなく舌を伸ばし、絡めとりつつ咥えこんでしまう。
その感触に、その少年はたまらずに喘ぎ声を上げた。
「ふ……ぴちゃ……れろ……くちゅ……」
実に卑猥な音がやけに響き、残りの少年たちはそれこそ羨ましそうにそれを眺め、我慢できなくなったように自分のモノに手を添えて、自慰を始めてしまう者もいた。
そして中には近くにいた明莉に向かい、ふらふらと歩きだす者も。
明らかに欲情しており、我慢できないといった様子だ。
「シたい……シたい……!」
うわごとのように繰り返す少年たちは、なるほどどうやらかなりの長期間、媚薬漬けになっていたのだろう。
理性はほぼ飛んでる様子から間違いない。
「でも、させてあげなかったんですね?」
「はい」
和奏がくすくす笑いながら頷く。
「ついさっきまで貞操帯をつけておいたんです」
「それは可哀そうに」
「あと、外した後も勝手に自慰しようとしたら、酷い目に遭うって――」
「ぎゃああっ!?」
不意に上がる悲鳴。
見れば少年の一人がひっくり返っており、明莉に股間を踏みつけられていた。
「……誰が勝手にシていいって言ったの?」
高級そうなやや高さのある草履に踏みしだかれて、すでに少年の陰茎はその形を歪めている。
「で、でも、我慢……うぎゃああっ!?」
さらに力を込めてにじったようで、両足をばたつかせてその少年がもがき苦しむ。
「あ、ああ、イくぅ……イく――イくぅぅううううっ!!」
どばぴゅ!
あっさりと。
草履の下から大量の白濁液がほとばしった。
その粘性のある液体は、後ろに引いていた明莉の左の足――草履や足袋、そして振袖の裾部分を盛大に汚してしまう。
「……信じられない」
本気で心外だと思っているかのように、明莉は右足をどかした。
「ああああ」
半ば潰れかけていたソレが、未練たらしく草履の裏にへばりついていたが、やがて引きはがされてぼとりと地面に倒れ込む。
「なんでこんなので出るの……? しかもこんなに汚して……」
「だ、だって、だって――え?」
持ち上がっていた明莉の右足が、再度無造作に落とされる。
ぐちゃり。
「い、いぎゃああああああっ!?」
「あは。あれ、潰れちゃったね?」
様子を眺めていた和奏が、愉快そうに隣で笑う。
「明莉って、極度の男嫌いなんです。怜奈とは正反対。だから明莉が男から精を貪る時って、必ず拷問になっちゃうんだよね」
「あらあら。それはまた」
すでにひしゃげたソレを執拗に踏みにじっている姿からは、なるほど憎しみすら感じられる。
本当に嫌いなのだろう。
その隣では、もう一人の少年が怜奈に何度も口内射精をさせられ、すでに腰が砕けてしまっている。
しっかりと着飾った振袖姿で、全裸の少年を犯す姿は何ともシュールだけど、悪くない。
彼氏君もこの姿を見たら、ちゃんと興奮してくれるのかな?
ならその時のために、練習はしておきたい。
「和奏? ちょっと勝負をしませんか?」
思いついて。
わたしはそう和奏に声をかけたのだった。